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10月コラム「小さな声がチームを支える」

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10月コラム「小さな声がチームを支える」

海老名総合病院 栄養科 木村夏実

管理栄養士として三年目を迎え、私は現在ICUを担当しています。
ICUは多職種が集まり、患者さんのベッドサイドでディスカッションが交わされる場所です。
モニター音や人工呼吸器の音が響く中、治療方針が次々と決まっていきます。
その場に加わり「栄養どうしますか?開始しますか?」と声をかける瞬間、存在意義を強く感じます。

重症患者さんでは下痢や嘔吐、腸管麻痺、消化管出血など、経腸栄養を妨げる事象が
頻繁に起こります。多くの場合、中止の判断がなされがちですが、投与速度やルートの変更、
栄養剤の検討、薬剤の追加など、工夫できる余地はあります。
原因を見極め、対応を提案することこそ、専門性が発揮されるところです。

ただし、その専門性を活かすにはチームの中で声を届けることが欠かせません。
看護師には「栄養で困っていることはありませんか?」と声をかけます。
栄養を考えるのは栄養士ですが、実際に投与や排便処理を担うのは看護師です。
だからこそ困っていることを把握し、看護ケア的な視点も栄養管理に取り入れることが
重要だと感じています。リハビリスタッフには「リハビリはどんな感じですか?」と聞くことで
覚醒や嚥下機能の状態をいち早く把握し、栄養管理に活かします。
臨床工学技士には「この機械はどういう働きをしているのですか?」と質問し、
お互いの業務内容の理解を深める中で栄養にも関心を持っていただけました。

こうした小さな関わりが信頼を生み、「栄養について相談してみよう」という空気をつくる。
質問することで自分の学びになるだけでなく、病態や治療を理解しようとする姿勢を示せる。
情報をつなぐことで多職種の視点が合わさり、より良いプランが生まれる。
そうした積み重ねがチーム全体の栄養への関心を高め、質の高い栄養管理につながるのだと実感しています。

私自身まだ学びの途中ですが、声をかける、困りごとを聞く、質問してみる。
そんな小さな一歩の積み重ねが確かにチームを変えていくのだと感じています。
管理栄養士の存在は決して小さくありません。これからも共に自信を持って、一歩ずつ前に進んでいけたら嬉しいです。