2025.11.26
11月コラム「厳しさと期待の中で働く病院管理栄養士の現場から」
高齢者にやさしい食事・生活を。
ファインの介護・医療食品のオフィシャルサイト
Medical and nursing care workers
2025.11.26
海老名総合病院 栄養科 滝沢綾乃
様々な学会に参加するなかで、「給食」に関して課題を抱える医療機関が増えていると感じます。
食材費の高騰や人手不足がしばしば聞かれ、外国人や高齢者を雇用しながらなんとか運営している施設も多いのではないでしょうか。
私は、セントラルキッチン方式をとる高度急性期病院にて勤務しています。当院のセントラルキッチン方式は、院外の工場で調理からトレイメイクまで行われ、配膳車にセットされた状態で病院に届きます。食事内容の変更が工場に反映されるのは約1日かかります。例えば、摂取・嚥下機能が低下し、全粥食から嚥下調整食へ変更したい場合は、2~3食は全粥食が届き、翌日から嚥下調整食に切り替わります。そのため、緊急性が高い場合は、病院側で微調整を行う必要があります。また、緊急入院で食事開始の指示が出た場合、工場からの食事提供は翌日以降となるため、当院で数食を準備する必要があります。当院では包装米飯やレトルト食品を数種類常備し、朝・昼・夕の3食を院内で提供できる体制を整えています。
セントラルキッチン方式は人員が少なくても運営できるというメリットがあります。一方で、食物アレルギーの多い患者では、院内で準備する食事のレパートリーが限られ、同様の内容が続いてしまうこと、急な退院や1食・1日単位の食上げ指示により、工場から余分に届いた食事の廃棄が増えてしまうことがデメリットとして挙げられます。そのため、嗜好と食物アレルギーを混同せず、本当に必要なアレルギー対応に絞ること、食上げ・食下げの緊急度を見極め、工場の締め切り時刻に合わせて翌日対応にできるか検討することなど、安全かつ無駄のない給食管理を行うための工夫が求められます。
今後も食材費の高騰や人手不足はさらに加速することが予想され、給食業務には一層の工夫が必要となるでしょう。他施設と情報を共有しながら、安心・安全な食事提供を継続できる体制を改めて考えていきたいと思います。