2025.11.26
11月コラム「厳しさと期待の中で働く病院管理栄養士の現場から」
高齢者にやさしい食事・生活を。
ファインの介護・医療食品のオフィシャルサイト
Medical and nursing care workers
2025.11.26
海老名総合病院 栄養科 金丸愛
病院の管理栄養士を取り巻く環境は、“厳しさ”と“期待”が同時に存在する時代に入っていると感じています。医療の高度化や患者の高齢化が進む中で、栄養管理に求められる役割は確実に広がっています。急性期では入院期間の短縮が進み、限られた日数の中で評価・計画・指導を行う必要があり、スピードと質のどちらも求められるようになっています。
一方で、管理栄養士の配置基準は十分とは言えず、病院経営の厳しさから人員削減に踏み切る施設もあります。実際、知人が勤務する病院でも管理栄養士の人数が減り、残ったスタッフがこれまで以上の業務を担う状況になっています。
業務は増え続けるのに、担い手は増えない、、、。
この現実は現場で働く私たちにとって大きな負担です。栄養ケア計画、診療加算への対応、カンファレンス、摂食嚥下支援、チーム医療など、どれも欠かせない取り組みであるほど、「もっと丁寧に向き合いたい」という気持ちとの間で葛藤が生まれます。それでも、栄養の専門性が患者さんのアウトカムに直結することは明らかで、医療スタッフからの期待はこれまで以上に高まっています。「食事は治療の一部」という認識が浸透し、栄養状態の改善が回復や再入院予防につながるエビデンスも増えています。期待の高まりは専門職として嬉しい一方、その分、責任の重さも強く感じます。だからこそ今、効率化と質の維持をどう両立していくかが大きな課題です。ICTの活用や業務分担、多職種との連携など、改善の方向性はいくつもありますが、病院ごとに状況は異なり、最適解は一つではありません。“忙しさの中でも質を落とさない栄養支援”をどう実現していくのか。いままさに模索しているところです。